みなさん、暑中お見舞い申し上げます。

2026年7月の活動を振り返って

2026年7月のICIは、これまで積み重ねてきた実践や問いを、公開文書として落とし込んだほか、AI時代における対人支援と内省のあり方を、あらためて考えた一か月でした。

キャリアコンサルタントの質向上をめぐる論点整理、メタ・スーパーヴィジョン(MSV)の理論と方法の公開、面談支援関連手引きの更新、そして「書くこと」「振り返ること」「思考の余白」をめぐる発信…

それぞれは異なる活動に見えますが、その根底には、実践を経験のまま終わらせず、立ち止まり、言葉にし、次の実践へとつなげていくという共通した姿勢で取り組みました。

1.ICI実践研究員の募集

7月初旬、これまで準備を進めてきた「ICI実践研究員」の募集要項を公開しました。

ICIが求めているのは、完成された理論を一方的に学ぶ人ではなく、自分自身の現場や問題意識を持ち寄り、問いを立て、対話し、試し、振り返りながら、実践知をともにつくっていく人です。

ICIが対象としているのは、キャリア支援、対人支援、組織支援、成人発達、AI活用などの多岐にわたる領域です。それらをつないでいるのは、シンプルに「人はどのように成長し、よりよく生き、働くことができるのか」という問いです。

単に組織の人数を増やすのではなく、それぞれの関心や専門性を生かしながら、少人数でも主体的に探究できる場を育てていきたいと考えています。

2.キャリアコンサルタントの「質」をあらためて考える

7月には、公開文書として「キャリアコンサルタントの質向上をめぐる論点整理――AI時代における対人支援の専門性とICIの実践的視座」を公開しました。

国家資格キャリアコンサルタントの登録者が増え、社会的な認知が広がる一方、資格取得後の実践機会、継続的な研鑽、養成・更新講習のあり方、活動領域の拡大、生成AIへの対応など、業界全体で考えるべき課題も見えてきています。

「質」とは、知識や面談技法をどれだけ身につけているかだけではありません。

相談者を一人の人間として理解しようとする姿勢、自らの見立てや関わり方を省察する力、安易に答えを与えず、その人自身が考える過程を支える力。そして、自分の限界や影響力を自覚し、必要に応じて他者から学び続ける姿勢も含まれます。

AIが情報整理や文章生成の多くを担えるようになるほど、人間の支援者には、関係性の中で起きていることを感じ取り、曖昧さに耐え、簡単には答えの出ない問いに伴走する力が求められます。

今回の文書は、キャリアコンサルタントの質を個人の努力だけに帰属させるのではなく、実践機会、スーパーヴィジョン、学習コミュニティ、実践知の共有を含む「専門職が育つ環境」の問題として捉え直したものです。

3.MSVの実践知を、理論と方法として体系化しました

7月後半には、「メタスーパーヴィジョン(MSV)――スーパーヴィジョン実践を省察するための理論と方法」を公開しました。

メタ・スーパーヴィジョンとは、スーパーヴァイザーが行ったスーパーヴィジョンそのものを対象に、その見立て、問い、介入、関係形成、権威性、倫理的判断などを省察する取り組みです。

相談者を支援する実践者がいて、その実践者を支えるスーパーヴァイザーがいます。そして、そのスーパーヴァイザーもまた、自らの実践を振り返り、学び続ける必要があります。

MSVは、スーパーヴァイザーを評価したり、正しい方法を教えたりするだけの場ではありません。スーパーヴァイザー自身が、自分の前提、判断、関係のつくり方に気づき、より自由で柔軟な実践者へと成長していくための学びの場です。

7月は、これまでの研修と対話の中で生まれてきた知見を整理し、ICIにおけるMSVの定義、理論的背景、実践構造、倫理、研修方法を、基本文書としてまとめました。

経験の蓄積を個人の暗黙知にとどめず、他者が学び、検討し、さらに発展させられる形へと整えていく。これは、ICIが実践研究機関として果たしていきたい役割の一つでもあります。

4.若者との面談から、支援の手引きを更新する

青年に対する就労・キャリア面談支援も継続しています。

7月は、異なる背景を持つ若者たちと出会いました。

一見すると、それぞれの語る将来像は大きく異なります。しかし、その奥には、自分を理解してくれる人との関係、家族への思い、過去への後悔、社会へ戻ることへの不安、自分なりの自立を実現したいという願いがあります。

一回限りの面談で、人生の答えを出すことはできません。

それでも、自分の経験を落ち着いて振り返り、「自分にも続けてきたことがある」「やってみたいことがある」「まずはここから始められるかもしれない」と感じられる時間をつくることはできます。

支援の手引書も更新しました。複数の面談を横断して見えてくる若者の共通した課題や、支援者が大切にすべき姿勢を抽出し、次の実践へ生かして参ります。現場で得た経験を記録し、複数の事例を比較し、そこから問いを立て、実践の手引きへ還元する。この循環もまた、ICIが大切にする実践研究の一つの形です。

5.AI時代に「書くこと」と「振り返ること」

「AI時代だからこそ、『書くこと』の価値を見直したい」では、音声によるAIとの対話が便利になる一方、文字を読み、言葉を選び、書き直すことの意味を考えました。

話すことには、思考を素早く外へ出す力があります。しかし、書くことには、立ち止まる時間があります。

書かれた言葉を見返すことで、自分の考えの飛躍や矛盾に気づき、言葉になっていなかった感情や前提を拾い直すことができます。

「Day Oneで始める、小さなジャーナリングの習慣」では、日々の断片を記録し、自分の言葉を残していくことを、小さな内省の実践として捉えました。

また、音声入力、会議記録、AIとの対話、ジャーナリング、ホームページや公開文書への発信をつなぐ「AIを基盤とした知のワークフロー」についても検討を進めました。

大切なのは、AIに考えてもらうことではなく、自分の経験や違和感をAIとの対話に持ち込み、整理された言葉を再び自分で読み直し、考え直すことです。

AIによって言葉を生み出す速度が上がったからこそ、人間には、あえて立ち止まり、その言葉が本当に自分の考えを表しているのかを確かめる時間が必要なのだと思います。

6.思考の余白と、人生の時間を考える

ジャーナルとして「自由なアイデアが生まれるところ――三上と、AI時代の思考の育て方」に最近思うところを掻いてみました。

中国・北宋の欧陽脩は、よい文章の着想が生まれる場所として「馬上・枕上・厠上」の三上を挙げたといわれています。移動中、眠りにつく前、一人で過ごす時間。いずれも、目の前の仕事から少し離れ、思考が自由に動き始める時間です。

現代では、そのような余白にスマートフォンが入り込みます。しかし、スマートフォンやAIが必ずしも思考を奪うとは限りません。ふと浮かんだ言葉を捕まえ、後から問い直し、別の経験と結びつける道具にもなり得ます。

同時に、ICIがこれまで探究してきた「四住期」についても、あらためて整理を進めました。

人生を学び、働き、社会的役割を果たし、やがてそれらから少しずつ離れながら、自分の生と向き合っていく。四住期は、人生を固定的な年齢区分に分けるものではなく、いま自分が何を引き受け、何を手放し、次の季節へ向かおうとしているのかを考えるための視点です。

日々の記録という小さな時間と、人生全体を見渡す長い時間。その両方を行き来することが、インテグラルキャリアにおける内省の大切な営みなのかもしれません。

7.7月を終えて

2026年7月は、ICIにとって「実践を振り返り、言葉にし、共有可能な知へと体系化する月」でした。

実践研究員の募集では、これから問いと実践をともに育てていく人たちへの入口を開きました。自己の内省や探求に関心のある方は是非お問い合わせください。

8月以降も、実践と省察、理論と現場、人とAIのあいだを往復しながら、ICIならではの学びを育て、少しずつ社会へ開いていきたいと思います。

今月もありがとうございました。
引き続き、ICIの活動をどうぞよろしくお願いいたします。

また次のマンスリーレターで、お会いしましょう。

― この記事は 0 回読まれています。―

対話しましょう

問いやご感想、異なる視点も歓迎します。