
Tidbits in My Life
〜 日々のさざめき 〜
個人的なつぶやきです。
『モヤモヤ』を聴く
――カウンセリングにおけるオノマトペ

カウンセリングにおけるオノマトペ
オノマトペという言葉を聞いたことがありますか?
オノマトペとは、音や動きだけでなく、人の感情や身体感覚、心の状態までも、その響きによって表現する言葉です。日本語は特にオノマトペが豊かな言語として知られています。
たとえば、「モヤモヤする」「ザワザワする」「ドキドキする」「ズーンと重い」
こうした言葉は、私たちが日常的に何気なく使っている表現です。しかし、改めて考えてみると、これらは単なる言葉以上の意味を持っているように思います。
特にカウンセリングや対人支援の場面では、オノマトペはとても興味深い役割を果たしています。
言葉になりきらない感覚
相談者が「モヤモヤするんです」と話したとき、そのモヤモヤは何を意味しているのでしょうか。
不安?、怒り?、迷い?、葛藤?、あるいは、そのどれでもなく、本人もまだ整理できていない感覚なのかもしれません。私たちはつい、「それは不安なんですね」「怒っているんですね」と意味づけをしたくなります。
しかし、その前に存在しているのがオノマトペです。
まだ言葉として整理されていない体験が、まず「モヤモヤ」や「ザワザワ」という形で現れているのではないでしょうか。
身体感覚への入口
心理学の世界では、身体感覚を手がかりに心の状態へ近づくアプローチがあります。「胸がギュッとなる」「胃がキリキリする」「頭の中がグルグルする」。こうした表現には、感情だけでなく身体感覚も含まれています。
むしろ感情より先に身体が反応し、その体験がオノマトペとして表現されている場合も少なくありません。
そう考えると、オノマトペは心と身体をつなぐ橋のような存在なのかもしれません。
同じ言葉でも意味は違う
面白いのは、同じオノマトペでも人によって意味が異なることです。
例えば「モヤモヤ」という言葉ひとつを取っても、
- 将来への不安
- 職場への怒り
- 人間関係の違和感
- 決断できない迷い
- なんとなくの疲労感
など、背景はさまざまです。
だからこそ支援者は、
「そのモヤモヤって、どんな感じですか?」
「身体のどこにありますか?」
「色や重さで表すとどうでしょう?」
と、その人自身の体験に寄り添いながら探っていくことが大切になります。
オノマトペは鮮度の高い言葉
ICIでは「鮮度の高い言葉」という考え方を大切にしています。オノマトペはまさにその代表例といえるでしょう。論理的に整理された説明よりも前に現れる、生の体験に近い言葉。
そこには、
- まだ十分に理解されていない願い
- 言葉にならない傷つき
- 整理しきれていない葛藤
- 説明できない違和感
などが含まれています。オノマトペは曖昧な言葉なのではなく、むしろ体験そのものに近い言葉なのかもしれません。
まだ言葉になっていない声を聴く
カウンセリングにおいて大切なのは、オノマトペをすぐに翻訳しすぎないことだと思います。「モヤモヤする」を「不安」に置き換え、「ザワザワする」を「緊張」に置き換える。もちろん、それが正しい場合もありますが、時には、その翻訳によって失われてしまうものもあります。支援者の役割は、意味を決めることではなく、その人が自分自身の意味を見つける手伝いをすることです。
オノマトペを丁寧に聴くことは、相談者の言葉の奥にある「まだ言葉になっていない声」を聴こうとする姿勢そのものなのかもしれません。そんなことを考えながら、改めて日常の会話の中にあるオノマトペに耳を傾けてみたいと思いました。
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