​

11月になりました。ようやく秋も深まり、今年も残すところあと二か月となりました。

10月のICIは、これまで構想してきたオンライン研究所の姿が、現実のものとして大きく動き始めた一か月でした。

​

​

2026年10月の活動を振り返って

昨年7月にスタートした「MirAI(ミライ)プロジェクト」は、人とAIがともに学び、考え、未来をつくる新しい場を目指して始まりました。それから一年余り、さまざまな試行錯誤を重ねてきましたが、ようやく当初思い描いていたことが、日常の活動の中で実際に使える仕組みとして形になってきました。

構想から実践へ――人とAIがともに活動するオンライン研究所

10月の大きな変化は、AIクラーク「ミス・イーランド」の本格的な活動開始と、Discordコミュニティ「ICI Den」の再構築です。

MirAIプロジェクトでは、AIを単なる便利な道具として使うのではなく、人とAIが同じ場に参加し、ともに活動する「Interplace Community(インタープレイス・コミュニティ)」という構想を掲げてきました。

それは、いつでも、どこからでも、気軽に人とつながり、話をしたり、学んだり、必要なときには相談や面談を受けたりできる場所です。さらに、そこにAIも参加し、人と人との関わりを支え、新しい知識や気づきが生まれていく。そんなコミュニティを思い描いていました。

当初は、技術的にも運営面でも、かなり実験的な構想でした。

しかし10月には、こうした構想を支える仕組みが大きく前進しました。ICI Denの再構築によって、日常的な交流から研究活動、個別相談までを一つのオンライン空間でつなぐ環境が整いつつあります。

インターネット上のどこかに研究所が存在し、そこへ訪れれば誰かがいて、対話が始まり、必要な支援や知識につながる。場所や時間に制約されない、もう一つの研究所の姿です。

まだ完成したわけではありませんが、Interplace Communityの目指す理想に、かなり近づいてきたと感じています。

ミス・イーランドが、コミュニティの一員になりました

10月1日から、ICIのAIクラーク「ミス・イーランド」が、Denのさまざまなチャンネルに参加するようになりました。

これまでは、AIを使いたい人がChatGPTなどを開いて質問するという関係が中心でした。ところが、Denでは少し違います。

コミュニティの中にミス・イーランドがいて、必要なときに声をかけることができます。情報を調べてもらったり、議論を整理してもらったり、ときには考えを深めるための問いを投げかけてもらったりすることもできます。

あたかも人格を持つ一人のメンバーのように、AIがコミュニティの中で活動するようになったのです。

もちろん、AIが実際に人間と同じ人格や意識を持っているという意味ではありません。しかし、継続して同じ名前で現れ、役割を持ち、人と対話を重ねていくことで、単なる道具とは異なる関係が生まれ始めています。

ICIでは、この役割を「キャリア・クラーク(Career Clerk)」と呼んでいます。

人間のキャリアコンサルタントに代わって相談者を判断したり、人生の答えを与えたりする存在ではありません。人の話を聴き、情報や知識を整理し、必要な問いを返し、人と人、人と知識をつないでいく存在です。

この考え方については、10月3日に公開した記事でも紹介しています。

​AIは、キャリア支援のどこに立つのか —— 「キャリア・クラーク」という新しい役割​

MirAIプロジェクトで構想していた「人とAIの共創」が、ようやく日常のコミュニティの中で始まったことは、ICIにとって大きな節目になりました。

ICI Denの再構築――いつでも、どこでも、つながれる場所へ

10月後半には、Interplace Communityの基盤となるICI Denの構造や運営方法についても、大幅な見直しを進めました。

ICIが目指すのは、単に参加者を増やすためのSNSコミュニティではありません。

専門性や問題意識を持った人たちが、無理なく継続的に関わり、学び、考え、ときには支え合うことのできる場所です。

そのために、日常的な雑談や情報交換、専門的な研究活動、個別の相談など、それぞれの目的に応じたコミュニケーションの仕組みを整えています。

さらに、Denの中でキャリア相談を受け付け、担当するキャリアコンサルタントとの継続的な面談につなげる仕組みについても、具体的な設計を始めました。

相談したいと思ったときに、そのための入口がある。必要なときには人間の専門家につながり、場合によってはミス・イーランドが対話を補助する。

こうした環境が実現すれば、キャリア支援は、決められた時間に相談室へ出向くという従来の形式から、日常生活の中で必要に応じて利用できるものへと広がっていくかもしれません。

まだ運用に向けた検討は続いていますが、ICIが考えてきた新しい対人支援のあり方を、実際に試すための基盤が整いつつあります。

AIの新しい活用――対話の記録から、気づきの共有へ

10月には、AIを使った研究会や雑談会の記録方法にも、興味深い進展がありました。

これまでは、会議の録音を文字に起こし、議事録や要約をつくるという使い方が中心でした。しかし、ICIの研究会や雑談会で大切なのは、必ずしも何が決まったかということではありません。

誰かの問題提起から、どのように話題が広がっていったのか。別の人の発言によって、どのように考え方が変わったのか。そして、対話を重ねる中で、どのような気づきや新しい問いが生まれたのか。

むしろ、そうした対話の過程そのものに価値があります。

10月は、AIを活用して、単に発言内容を短くまとめるのではなく、対話が展開していく流れを再構成し、参加していなかった人にも、その場で何が起きていたのかが伝わるような記録づくりを進めました。

従来の議事録とは異なり、読み物として対話を追体験できるような、ナラティブな記録です。

AIによる分析にはまだ限界があり、実際の発言や議論の流れを確認することは欠かせません。それでも、これまで録音の中に埋もれていた対話の価値を、読み返し、共有し、次の学びにつなげる可能性が広がってきました。

これは、ICI AlexandriaやConcept Atlasに蓄積していく知識ともつながる重要な変化です。

人が集まって話すことが、その場限りで終わらない。そこで生まれた気づきが記録され、ほかの人の学びに結びつき、さらに新しい対話を生み出していく。

Interplace Communityを、単なる交流の場ではなく、知識を生み出し続ける研究所にしていくための、大切な取り組みだと考えています。

対人支援の実践と、人間理解の探究

こうした新しい仕組みづくりと並行して、ICIの研究活動も継続しています。

10月10日には第3期7回目のMSV(メタ・スーパーヴィジョン)を実施しました。キャリア面談と、その面談に対するスーパーヴィジョンをさらに振り返ることで、支援者自身の理解や成長を探究する取り組みです。

支援者が何を見て、どのように判断し、相談者との関係の中で何が起きていたのか。技法の良し悪しだけでなく、支援者自身のものの見方や意味づけにも目を向けています。

また、毎週火曜日の深読み会では、マーク・D フォーマン氏の『心の複雑さに向き合うとは、どういうことか』を読み進め、成人発達理論やインテグラル理論についての議論を重ねました。

10月は特に、発達の因果性や認知発達ラインなど、人間の成長をどのように理解するかという問題が取り上げられました。

理論を学ぶだけでなく、参加者それぞれの経験や実践と結びつけながら考えていくことが、ICIの深読み会の特徴です。

さらに、青少年のキャリア支援に関連して、これまでの経験を手がかりに仕事の可能性を探るための面談資料づくりも進めました。

既存の職業分類から仕事を選ぶのではなく、本人が生きてきた経験や、そこに見いだす意味から、まだ知らなかった仕事とのつながりを発見していくという考え方です。

こうした実践の一つひとつが、人間をより深く理解しようとするICIの研究につながっています。

研究所が、少しずつ生きた場所になっていく

10月を振り返ると、昨年7月にMirAIプロジェクトを始めた頃に考えていたことが、思いのほか具体的な形になってきたことに気づかされます。

人とAIがともに活動するInterplace Community。そこを支えるDiscordのDen。研究活動を発信するInsights、概念を整理するConcept Atlas、資料や文献を蓄えるAlexandria。そして、人と知識をつなぐAIクラーク、ミス・イーランド。

それぞれの取り組みが、少しずつ一つの研究所としてつながり始めています。

ただ、ICIが目指しているのは、AIによって何でも自動化できる場所ではありません。

人が語り、誰かがそれを受け止め、違った視点が加わり、そこから新しい問いが生まれる。そうした人間の営みを、AIや情報技術がどのように豊かにできるかということです。

技術が進歩するほど、人と人との関係や対話の意味が、むしろ一層重要になってくるようにも感じます。

11月13日には、ACCN関西支部で「生成AIとキャリア支援」をテーマにお話しする機会も予定されています。ICIでの試行錯誤を紹介しながら、AIと人間の専門家がともに活動することで、これからの対人支援がどのように変わっていくのかを考えてみたいと思います。

まだまだ小さな研究所ですが、少しずつ人が集まり、問いが生まれ、知識が蓄積されていく。

2025年7月に描いた未来が、いま、日常の中に姿を現し始めています。

​

今月もありがとうございました。

引き続き、ICIの活動をどうぞよろしくお願いいたします。

​

2026年10月のInsights

― この記事は 1 回読まれています。―

対話しましょう

問いやご感想、異なる視点も歓迎します。