グレース&グリット : 愛と魂の軌跡

ケン ウィルバー;宏太郎 伊東
書籍 | 1999 | 春秋社
ICI AlexandriaVirtual Knowledge Library

ICI解説

ICIが本書を重視する最大の理由は、後のインテグラル理論における「理論から生へ」の転回を理解するための一次資料としての価値にある。

初期のケン・ウィルバーは、意識・発達・心理学・宗教などを包括する理論体系の構築を進めていた。しかしトレヤとの経験は、精緻な理論によって世界を理解することと、病、愛、葛藤、喪失、死といった予測も制御もできない現実を生きることとの間にある緊張を、ウィルバー自身の問題として浮かび上がらせた。本書には、その緊張が抽象的な議論ではなく、当事者としての経験を通して記録されている。

この点は、ICIがインテグラル理論や成人発達理論を扱う際の基本姿勢とも深く重なる。理論は人間を分類し説明し尽くすものではなく、複雑な生を理解するための「地図」の一つである。現実の人間は常に理論からはみ出し、そのずれにこそ、支援や対話によって確かめるべきものが存在する。

したがって本書は、ウィルバー思想の形成過程を知る資料であると同時に、「理論を生に適用する」のではなく、「生との遭遇によって理論そのものが問い直され、組み替えられていく」という、ICIにとって重要な理論と実践の往還を考える資料として位置づけられる。

インテグラルという営みが、世界を包括的に説明する理論体系から、現実の人間がいかに生き、関係し、苦しみ、変容していくのかを引き受ける実践へと開かれていく。その転回を内側からたどることのできる一次資料として、本書はICI Alexandriaにおいて重要な位置を占める。

ICI内での位置づけ

主領域世界観
関連領域変容デザイン実践理論
資料区分重要資料

キーワード

グレース・アンド・グリット;ケン・ウィルバー;生と死;スピリチュアルな成熟;自己変容的発達;ライフデザイン;支援者の在り方;AQAL

ICIノート

ICIにとって本書は、インテグラル理論を抽象的な理論体系としてではなく、病、愛、死、喪失、支援、人生の選択に直面する人間の生き方として捉えるための重要な参照資料である。トレヤの「doing」から「being」への変容や、死を通じた生の再理解は、成長と統合、成人発達、スピリチュアリティをめぐるICIの探究と接続する。また、終末期の医療・支援、本人と家族の対話、支援者自身の人生観を考える素材として、キャリア支援をライフデザインや存在の支援へ広げる視点を与える。

概要

ケン・ウィルバーが妻トレヤ・キラム・ウィルバーとの出会い、結婚、乳がんとの闘病、そして死別に至る約5年間の経験を記録したノンフィクション作品。ウィルバー自身の回想と、トレヤが遺した日記・手記を交互に収録し、病気、介護、心理療法、スピリチュアリティ、死の受容といった主題を多面的に描く。個人の闘病記であると同時に、人間の成長、愛、苦しみ、癒し、宗教的・精神的探究を扱った記録として位置づけられる。

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