数千年稼働する電池技術の展望

2020年の WIRED の記事で千年稼働する「放射性ダイヤモンド電池」の話題がありました。
原子炉から出る廃棄物である炭素-14を人工ダイヤモンドに閉じ込め、数千年にわたり発電し続けるという夢のような構想。
記事の中では、まだ実験室の中のアイデアにすぎませんでしたが、もし実現すれば、放射性廃棄物の処理問題と、エネルギー供給の課題を同時に解決できるかもしれない——そんな未来への希望を感じさせるものでした。
あれから5年経ちました。この技術は少しずつ現実のものとなりつつあるようです。

2024年12月に、イギリスのブリストル大学と原子力庁(UKAEA)は、ついに世界初の炭素-14ダイヤモンド電池を試作しました。出力はごくわずかですが、医療用の埋め込み機器や宇宙探査機など、長寿命と安全性が求められる分野では唯一無二の存在になり得ます。数千年という途方もない時間を「動き続ける力」として託すことができるのです。
2025年3月には韓国の DGIST が炭素-14を用いたベータ電池において、エネルギー変換効率 2.86%という高効率設計を報告しています。
また、中国では 2024年初頭、Betavolt 社が、50年間持続する小型ベータ電池の開発に成功しました。
まだ「手元のスマホが千年電池で動く」訳ではないですが、医療機器や宇宙探査機のように、替えのきかない場面で使える日もそう遠くはなさそうです。
かつては未来の空想にすぎなかった技術が、今は複数の国で試作や応用の段階に入っていますね。