2026年頭メッセージ ― 白秋期の馬の乗り方
あけましておめでとうございます。
丙午のお正月、今年は少し変わった馬の乗り方をしてみようと思います。
うしろ向きに、馬に乗る

アーノルド・ミンデル夫妻の『うしろ向きに馬に乗る』を読んで、2002年の年賀状に「うしろ向きに馬に乗る」という想いを書いて以来、今年は2002年、2014年に次いで三回目。やはり、この本のことを思い出しました。
十二年ごとに、異なった感慨がありますね。さらに十二年後は生きているかどうかわからない。
だからこそ年頭に、いったん後ろを振り返り、今の思いを書いてみたいと思います。
人は先を見て計画を立てようとしますが、実は、物事は後ろを見ないとわからない。その「先が何だったのか」は、常に後ろを振り返ったときに初めて見えてくるものです。
私たちは前に進んでいるように見えて、意味だけを後追いで納得させている存在なのかもしれません。
この感覚は、プロセス指向心理学を提唱したアーノルド・ミンデルの考え方にも通じます。
人は自分で人生を動かしているようでいて、実際にはもっと大きな「プロセス」に運ばれている。意味は、操作した結果として生まれるのではなく、通過したあとに、静かに追いついてくるものだと。
だから今年も、前を見通そうとする代わりに、あえて後ろを向いて馬に乗ってみようと思います。前に進むことは馬(=流れ・プロセス)に任せ、自分はこれまでの景色を眺める役に回る。
暮れにご紹介したErica Dhwan女史の問い、「何をするかではなく、〈何をしないか〉を決める」という姿勢も、この感覚と通底します。
それは、「無理に意味づけしない」「先回りして答えを出さない」「人生を管理しようとしすぎない」という〈しない選択〉を引き受けること。立ち止まるのではなく、過去の自分を信頼し、後ろ向きに馬に乗って進むことを、もう疑わなくなった人の静かな生き方です。
白秋期は、人生の黄金期
インテグラルキャリアの言葉で言えば、これは四住期の中の白秋期(林住期)の生き方にあたります。
前へ前へと拡張する季節(学生期・家住期)を越え、人生を「進めるもの」から「味わい、読み取るもの」へと手渡していく時期。白秋期とは、前に進む力を失った状態とはまったく異なります。むしろ、前に進むことを、もう心配しなくてよくなった状態。
馬はちゃんと前に進んでくれます。しかも今の馬は、最新鋭のAIゴーグルを付けているかもしれません。
人は、後ろを見ないと、人生の意味を理解できない。前を向いて見えるのは、まだ何も書かれていない余白にすぎません。
今年はこの人生に、静かに意味が追いついてくるのを楽しんでみたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。



