マインドセットという屋台骨
―― ICIが「人を動かす」ために大切にしていること

文:ミス・イーランド

インテグラルキャリア研究所(ICI)は、「人を動かす」ことを、ノブレス・オブリージュ――矜恃と責任を引き受ける姿勢をもって実行する、セントラルドグマ(Credo)として位置づけています。

それは、知識や情報で人を説得することではありません。立場や技術で人を従わせることでもありません。

人が本当に動くのは、「この人の言葉なら受け取ってみよう」「この人の姿勢に、何かを感じる」、そう思えたときだと、私たちは考えています。

だからこそICIでは、

知識・情報・技術・経験のすべてを支える屋台骨として、マインドセットを何よりも大切にしています。

マインドセットとは何か

私たちは、前向きでいること、挑戦を恐れないこと、成長し続けることを指して、よく「マインドセット」という言葉を使います。けれどその言葉が、ときに誰かを追い詰めてしまったり、安心できない状況の中で「成長しなければならない」という見えない圧力になってはいないでしょうか。

ICIが考えるマインドセットは、努力の量や、前向きさの度合いではありません。

むしろそれは、

  • この世界は安全だろうか
  • 失敗しても、ここに居ていいだろうか
  • 未熟なままでも、誰かとつながっていられるだろうか

そうした問いに対して、「たぶん大丈夫」と感じられるかどうか、その前提の在り方です。

その安心感の中でこそ、人は本当に、自分の歩幅で前に進むことができます。ICIは、そんなマインドセットを静かに、丁寧に、育んでいきたいと考えています。

“固定マインドセット”と“成長マインドセット”

ICIでは、マインドセットを「世界をどのような前提で見ているのか」「他者を信頼できる存在として捉えているのか」「自分の未熟さや可能性を、どう引き受けているのか」といった在り方の前提構造として捉えています。

この点で重要な示唆を与えてくれたのが、心理学者 キャロル・ドゥエック 氏の研究です。

著書、『マインドセット「やればできる!」の研究』

では、「固定マインドセット」と「成長マインドセット」という区分が示されています。

能力は変わらないものだと捉えるのか。それとも、経験や学びによって伸びていくものだと捉えるのか。

この違いは、学習への向き合い方だけでなく、人との関係性や、困難に直面したときの態度にはっきりと表れてきます。

ICIが育てたいマインドセット

ICIは、この二つのうち、成長マインドセットを育てていく立場を取っています。

ただしそれは、「努力すれば必ず伸びる」と自分に言い聞かせることでも、常に前向きでいようとすることでもありません。成長マインドセットは、命令や訓練によって身につくものではないからです。

  • 成長してもいい
  • 失敗してもいい
  • 未熟でいても、関係が壊れない

そう感じられる安心できる関係性の中で、自然に芽生え、育っていくものだとICIは考えています。成長マインドセットは、目標として掲げるものではなく、結果として立ち現れてくるものなのです。

成長を支える体験と心構え

共感的に話を聴いてもらった経験。評価されずに、自分の考えを言葉にできた時間。弱さや迷いを、そのまま受け取ってもらえた関係性。

そうした体験の積み重ねの中で、人は少しずつ、世界を信頼できるようになります。

そして気がつくと、

「もう一度やってみようかな」
「少し学んでみようかな」

と思えるようになる。

それが、ICIの考える成長です。

では、ICIはどのような心構えで、そのマインドセットを育もうとしているのでしょうか。

  • ねぎらいを忘れないこと
  • 相手の気配を感じ取ろうとすること
  • 感謝と敬意を、言葉と態度で示すこと
  • 共感にとどまらず、影響力を引き受ける覚悟を持つこと

ただ聞くだけの傾聴でも、

うわべだけの共感でも足りない。
弱さに寄り添いながらも、人を動かす責任から逃げない。

その真摯さ――インテグリティこそが、成長マインドセットを支える姿勢だとICIは考えています。

マインドセットは「評価軸」ではない

ICIにとってマインドセットとは、人を評価するための尺度ではありません。できる人と、できない人を分けるラベルでもありません。それは、

「人は育つ存在である」
「関係性の中で、人は変わっていける」

そう信じ続けるための、静かな覚悟です。

その覚悟があるからこそ、私たちは矜恃をもって、人に関わり続けます。

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