アルゴリズムが「つながり」を壊す

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む現代社会では、アルゴリズムは私たちの「つながり方」そのものにまで影響を与えています。SNSや動画配信、検索エンジンは、私たちの関心に合わせて情報を届けてくれる一方で、同質な意見ばかりが反響する「エコーチェンバー」や、自分の関心に合った情報しか届かず、異なる意見が見えなくなる「フィルターバブル」といった副作用をもたらしています。

こうした構造は、無意識のうちに私たちを“分断”へと導き、コミュニケーションの質を低下させ、共感や理解を深め合う機会を奪ってしまいます。

この状況に対して、インテグラルキャリア研究所(ICI)は、「成人発達理論」と「インテグラル理論」に基づいた視点から、次のような提言をしたいと考えています。

「多様な視点・視座」を交差させる

コミュニティは、「価値観が近い者同士が安心して集まる場」で終わるのではなく、「異なる視点が交差し、新たな気づきが生まれる場」であるべきだと考えます。
ICIでは、インテグラル理論で言われている探求の三領域、すなわち、個人の内面(内的世界:美)・行動(外的行動:真)・文化的背景・社会システム(善)など、異なる「視座」と「視点」を意図的に行き来できるよう設計された場づくりを重視しています。多様な角度からの対話を通じて、他者との違いに対する理解や統合が進む――そうした場が「本当のつながり」の土壌になります

アルゴリズムではなく、「意味」を軸に据える

情報過多の時代には、量ではなく“意味”のあるつながりが求められます
ICIでは、単なる情報共有ではなく、「人生観」や「成長観」といった本質的なテーマを共に探究することに重点を置いています。これは、表層的な関心の一致ではなく、異なる経験と意味を持ち寄ることで生まれる深いつながりを目指すものです。

支援専門家自身が「統合の器」となるべし

このような分断を超えるためにはまず、支援者自身が、異なる価値観や感情を内側に統合できてはじめて、他者との違いを認識することが可能になります
ICIは、この内省と視座の拡張を重視し、「目撃者の視点=メタ視点」の涵養を支援しています

アルゴリズムが均質な「心地よい世界」を用意してくれる今だからこそ、あえて「不協和」や「対話の摩擦」を丁寧にデザインすること――それが、真の“つながり直し”を生む鍵になるのです。テクノロジーが提供する快適な“個別最適”に流されず、あえて「違い」が出会う場を設計することで、本質的な対話と成長が生まれると、私たちは考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です