HRからHC、そして共感資本へ
〜 対人支援者に求められること 〜

今日、「人」を Human Resource(人的資源) として捉えてきた時代から、Human Capital(人的資本) へ視点が移っています。そして、その延長線上にあるのが「共感」を資本とみなす考え方です。

この流れの中で、対人支援者が担うべき役割も変わりつつあります。支援の現場は、単に問題解決を急ぐのではなく、クライエントの内側にある未整理な感情や揺らぎに寄り添い、それを「まだ形になっていない価値」として尊重する場へと広がっています。ICIでは、アンメット共感という視点を大切にしています。支援者はその揺らぎに伴走することで、やがて洞察や新しい意味生成への道をひらいていきます。

また、前回触れたように、コミュニケーションの多様性は支援のあり方を大きく変えています。メールやチャットといったデジタル・ボディランゲージを読み解き、信頼を回復・強化することは、従来の対面支援に勝るとも劣らない価値を持ちます。ここで支援者は「翻訳者」としての役割を担い、曖昧なサインを社会的な意味へと変換していくことになります。

では、このような活動を通じて支援者はいかにして生計を立て、同時に社会へ貢献できるのでしょうか。その答えの一つが、ICIが提唱している 信頼報酬感情報酬 の仕組みです。信頼や感情そのものを報酬に結びつける発想は、従来の「時間や成果に対する対価」という枠組みを超えています。サブスクリプション型の伴走支援、コミュニティでの価値循環、共感スコアを基盤にした組織開発など、具体的なマネタイズの形も見え始めています。

このように、HRからHCへのシフトを超え、共感そのものが資本となる時代において、対人支援者は「共感を媒介に人と社会をつなぐ職能者」として新しい役割を担います。それは単なる相談対応ではなく、共感を資産として循環させる営みです。そしてその営みは、生活の糧を得ながら、同時に社会に調和と意味をもたらす活動となります。

前述した流れの延長にあるものとして、対人支援者に求められるのは、共感を資本に変えるプロフェッショナルになることです。そこにこそ、この時代を生きる私たちが選び取るべき未来の可能性が宿っています。

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