『Life on the Soil』〜 土上の生化 〜

生きることと土の上の私たち

生きることは、息をすることです。息は「気」を巡らせ、身体と世界をつなぎます。キャリアという言葉が示すのは、単なる職歴や経路ではなく「生き様」そのもの――つまり、生の様態です。
そして私たちは、その生を土の上で営んでいます。土とは何でしょうか。2021年のあるセミナーで耳にした「土は死体でできている」という言葉は、私のライフキャリア観を根底から揺さぶりました。地表に立つ私たちは、多くの命の終わりが積み重なってできた土壌の上に息づいているのです。

地上の生と地下の生

植物は地上に枝葉を広げると同時に、地下に根を張ります。動物もまた、見えない形で地中へと「根」を伸ばし、そこから命の栄養を受け取っています。地上の生(此岸)と地下の生(彼岸)は、地面を境に二つの半球として響き合っています。古来より黄泉の世界が地中に描かれてきたのも、その感覚の延長なのかもしれません。

視点の転換と時間感覚の変化

この気づき以来、私のライフサークルの水平面は「土」へと変わりました。そこから見えるキャリアの景色は、時間の感覚も変えてしまいます。クロノス(時計の時間)の流れの中で積み上げてきた吸収(蓄積)を、カイロス(機の時間)の訪れとともに収穫(消費)へと切り替える。そのプロセスは、人生の疎から密、そして孤へと至る軌跡とも重なります

ライフデザインへのシフト

いままで関心が寄せられていたのは、この「地上の生」のデザインです。いまやキャリアデザインを超えライフデザイン――より全体的な生の構築へと関心が拡がっています。ICIでは、自分自身だけでなく、関わる人々がそれぞれのライフプロセスをデザインし、豊かに息づけるような場と関わりを育んでいきたいと思います。

これからの歩み

そして50代を過ぎたら、仕事はライフワークへと移行していくでしょう。そこから先は、個人の到達点ではなく、土の上に次の種を残す営みへと向かいます。生きることの充足とは、ただ吸い込み続けることではなく、蓄えを手放し、他者と世界へ還していくこと――その循環の中にこそあるのです。

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